英文和訳とAI

先日、ちょっと興味深い英文和訳例に出会った。

Google 認定教育者レベル 1 模擬問題集 (2020) : Cloud Smog

QUESTION 1

学習目的は生徒が話すときに投影の概念を理解することです。
プロフェッショナルの講演者がパフォーマンスを録画して共有している動画リソースはどこにありますか?

これはGoogle 認定教育者レベル 1 模擬問題集からの引用。全体的にやや不自然だが *1、 ここでは最も意味不明な「投影の概念」に注目したい。おそらく英語から日本語に訳されており、原文は確認できる。

Google Certified Educator Level 1 Exam Answers (2020) : Cloud Smog

QUESTION 1

Your learning objective is to get students to understand the concept of projection when speaking. Where can you find video resources from professional speakers who record and share their own public performances?

私は英文を読んで、the concept of projection の意味がすぐにはわからなかった。その理由は、projection が「投影」のことだと誤解したからだ。学校教育現場では、私が子供の頃はプロジェクターでスクリーンに投影してみせる授業があった。今なら、PC やタブレットの画面を大きなモニターに投影するのだろう。そういうわけで教育のトピックにおけるこのprojection は「投影」という意味だと思い込んだ。

しかしそれでは次の第2文「自身の講演を記録・共有する、プロの講演者による動画はどこで探せますか?」に意味がつながらない。しばらく考えたり調べたりして、このprojection は「投影」ではなく「計画(プロジェクト)」の意味だとわかった。つまりプロの講演者は場当たり的に思いついたことを話すのではなく、事前に話す内容を検討し計画を立てて講演をする。そういう話し方があるのだと理解させることが今回の教育の目的だと第1文で述べていたわけだ。第1文を訳すと「(あなたの生徒の)学習目的が、事前の計画に沿って話すという概念を生徒に理解させることだとします。」くらいになる*2

私がこの第1文を正しく訳すためには、第2文を読んでから、二つの文のつながりを考える必要があった*3。第1文だけ見せられて訳しなさい、ときたら、正しく訳すことはできない。AI はこれを正しく翻訳できるのだろうか思い、Google 翻訳とDeepL で試してみた結果、

Google 翻訳:

あなたの学習目標は、話すときに投影の概念を生徒に理解させることです。 自分の公演を録音して共有するプロのスピーカーからのビデオリソースはどこにありますか?

DeepL:

あなたの学習目標は、生徒に話すときのプロジェクションの概念を理解してもらうことです。プロのスピーカーが自分のパフォーマンスを録画して公開しているビデオ資料はどこにありますか?

Google 翻訳はprojection を「投影」と誤訳している。DeepL はprojection を無難に「プロジェクション」としているが、プロジェクトとは違ってプロジェクションは一般に使われている日本語とは言えず、適切な翻訳ではないだろう。現在の一般的に利用可能な翻訳ツールでは、まだこの例を適切に翻訳することはできないようだ。

英語のネイティブスピーカーならば第2文を読まずにthe concept of projection when speaking だけで「ああ、計画に沿っての講演の話だな」とわかるのだろうか。いずれにしてもAI がこの文章も適切に翻訳してくれるようになるのは、そう遠い未来ではないのだろう。

*1: Google認定教育者試験受験体験記 - 今日も明日も授業道~国語科女性教員奮闘記~Google認定教育者を目指そう! - ならずものになろう を見るとGoogle 認定教育者の試験の日本語は実際ヘンらしいので、こういう日本語訳になっているのもあえて本番を想定してかもしれない。

*2:受験英語がベースなので、我ながら訳が下手だ。

*3:第1文に下線が引かれていて、そこを訳しなさいと出題されたときに、第2文も読んでつながりを考えないと正答が難しいという意味で、高校生向けとしてなかなかいい英文和訳問題ではないかと思う。